噛み合わせが深い「過蓋咬合」
過蓋咬合とは
「過蓋咬合(かがいこうごう)」とは、上の歯が下の歯を深く覆っているかみ合わせのことです。
過蓋咬合の原因
過蓋咬合の原因は、ものをかむときに使う筋肉(咀嚼筋)や唇の筋肉(口輪筋)の力が強く、その結果、上顎と下顎が垂直的に成長できなかったり、前歯が後ろに倒れ込んだりするという先天性のものになります。
過蓋咬合の予防方法
ありません。
過蓋咬合のデメリット
「歯ぐきがみえる」という審美的な問題や、「下顎が後ろに押し込められる」という機能的な問題、などが挙げられます。
過蓋咬合の治療方法
子供の場合
過蓋咬合は、その原因によって臼歯の低位による過蓋咬合と前歯の挺出による過蓋咬合に分けられます。臼歯の低位による過蓋咬合の場合は、咬合挙上板などを用いて噛み合わせの高さを上げていきます。前歯の挺出による過蓋咬合の場合は、子供のときの治療は難しいので経過観察を行い、大人になってから治療を行います。
- 使用する装置・治療方法:咬合挙上板、経過観察、など
大人の場合
大人の過蓋咬合の治療も、臼歯の低位による過蓋咬合と前歯の挺出による過蓋咬合で治療の内容が変わってきます。臼歯の低位による過蓋咬合の場合は奥歯を挺出させて噛み合わせの高さを上げていきます。前歯の挺出による過蓋咬合の場合は、噛み合わせの高さを維持しながら前歯を圧下していきます。マウスピース型矯正装置は、歯を全体的に覆う装置なので歯を挺出させるには不利な構造をしており、一般的には過蓋咬合の治療は行いにくい装置であるとされています。
- 使用する装置・治療方法:表からの白い装置(マルチブラケット装置)、マウスピース型矯正装置、など
過蓋咬合の治療費の目安(税込)
子供の場合
437,800〜532,400円
大人の場合
831,600〜910,800円
過蓋咬合の治療期間と通院回数の目安
子供の場合
- 治療期間:1〜2年
- 通院回数:12〜24回
大人の場合
- 治療期間:2〜3年
- 通院回数:24〜36回
過蓋咬合の治療の流れ
子供の場合
- 相談
- 検査・診断
- 一期治療開始
- 一期治療終了
(以下は、子供の治療から大人の治療へ移行する場合) - 永久歯萌出完了または成長終了まで経過観察
- 再検査・再診断
- 二期治療開始
- 二期治療終了・保定開始
大人の場合
- 相談
- 検査・診断
- 二期治療開始
- 二期治療終了・保定開始
過蓋咬合の治療例
過蓋咬合の治療のリスク
- 歯:齲蝕(むし歯)、歯質の欠損、歯根吸収、骨癒着、歯髄炎、歯髄壊死
- 歯周組織:歯肉炎、歯周炎、歯槽骨骨吸収、フェネストレーション、歯肉退縮、知覚過敏
- 軟組織:外傷、やけど(化学的・機械的)、アレルギー(特にニッケルとラテックス)
- 歯科矯正用アンカースクリュー:破損、脱離、誤飲、歯根損傷
- その他:(歯などの)痛み、装置の破損・脱離・誤飲、顎関節症、細胞毒性、感染、放射線被曝、治療期間の長期化、治療目標が完全に達成できない、後戻り、非症候群性原発性萌出不全(Primary Failure of Eruption)
過蓋咬合の治療のよくある質問
過蓋咬合の治療は、子供のうちにしたほうがいいのでしょうか?
子供の過蓋咬合に対する治療の有効性については、2018年に「Orthodontic treatment for deep bite and retroclined upper front teeth in children.」という論文が出されています。
この論文では、過去に行われたさまざまな研究を調べた結果、子供のうちに過蓋咬合の治療を行うことが望ましいかどうかについて調べた信頼できる研究が見つからなかったと報告しています。したがって、現時点で子供の過蓋咬合の治療を行うかどうかは、それぞれの先生の判断に委ねられることになります。私の考えでは、特に事情がない限りは、子供の過蓋咬合に対する治療はあまり積極的に行う必要はないのではないかと考えています。
参考文献
- Contemporary Orthodontics 6th Edition. William R. Proffit, Henry W. Fields, Brent Larson, David M. Sarver. Elsevier.
- Millett DT, Cunningham SJ, O’Brien KD, Benson PE, de Oliveira CM. Orthodontic treatment for deep bite and retroclined upper front teeth in children. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Feb 1;2(2):CD005972.