噛み合わせが悪い/ずれている「交叉咬合」

交叉咬合とは

「交叉咬合(こうさこうごう)」とは、奥歯や前歯がずれてかんでいるかみ合わせのことです。前後的にずれている交叉咬合は反対咬合と同じものを示すことが多いため、ここでは水平的(左右)にずれている交叉咬合について説明します。

交叉咬合の原因

交叉咬合には、上顎歯列の幅が狭くて下顎歯列の幅とあっていないことが原因で下顎をずらしてかんでいる歯性(機能性)の交叉咬合と、上顎と下顎の位置が悪いことが原因でずれてかんでいる骨格性の交叉咬合があります。いずれも先天性のものになります。

交叉咬合の予防方法

ありません。

交叉咬合のデメリット

「顔や顎が歪んでいる」「見た目が悪い」という審美的な問題や、「ものがかみにくい」という機能的な問題、などが挙げられます。

交叉咬合の治療方法

子供の場合

歯性の交叉咬合の場合は、上顎歯列と下顎歯列の幅をそろえる必要があります。子供の場合は体の成長が利用できるので、成長を利用して上顎歯列をひろげ、上顎歯列と下顎歯列の幅をそろえていきます。

  • 使用する装置・治療方法:Wタイプ拡大装置、床拡大装置、など

上顎歯列と下顎歯列の幅のずれが軽度であれば、上顎歯列をひろげながら、歯ならびも同時に整える治療を行います。

  • 使用する装置・治療方法:マウスピース型矯正装置、など

骨格性の交叉咬合で上顎と下顎のずれが小さい場合は、成長を利用して上顎と下顎の位置がそろうように誘導していきます。

  • 使用する装置・治療方法:機能的矯正装置、など

骨格性の交叉咬合で上顎と下顎のずれが大きい場合は、成長が終了するまで待ってから外科的矯正治療などで治していきます。

  • 使用する装置・治療方法:経過観察、など

大人の場合

歯性の交叉咬合の場合は、子供の治療と同様に、上顎歯列と下顎歯列の幅をそろえる治療を行います。大人の場合は体の成長が利用できないので、歯を移動させることのできる範囲内で、上顎歯列と下顎歯列の幅をそろえていきます。

  • 使用する装置・治療方法:表からの白い装置(マルチブラケット装置)、マウスピース型矯正装置、など

骨格性の交叉咬合の場合は、上顎と下顎のずれが小さい場合は、歯の移動だけで上顎と下顎のずれを補正するカムフラージュ治療を行います。上顎と下顎のずれが大きい場合は、顎の位置を正しい位置にするために外科的矯正治療を行います。「外科的矯正治療」は、公的医療保険の給付の対象となります。

  • 使用する装置・治療方法:表からの白い装置(マルチブラケット装置)、マウスピース型矯正装置、顎離断手術、など

交叉咬合の治療費の目安(税込)

子供の場合

386,100〜503,800円

大人の場合

765,600〜875,600円

交叉咬合の治療期間と通院回数の目安

子供の場合

  • 治療期間:1〜2年
  • 通院回数:12〜24回

大人の場合

  • 治療期間:2〜3年
  • 通院回数:24〜36回

交叉咬合の治療の流れ

子供の場合

  1. 相談
  2. 検査・診断
  3. 一期治療開始
  4. 一期治療終了
    (以下は、子供の治療から大人の治療へ移行する場合)
  5. 永久歯萌出完了または成長終了まで経過観察
  6. 再検査・再診断
  7. 二期治療開始
  8. 二期治療終了・保定開始

大人の場合

  1. 相談
  2. 検査・診断
  3. 二期治療開始
  4. 二期治療終了・保定開始

顎変形症の場合

  1. 相談
  2. 検査・診断
  3. 術前矯正治療開始
  4. 顎離断手術
  5. 術後矯正治療開始
  6. 術後矯正治療終了・保定開始

交叉咬合の治療のリスク

  • 歯:齲蝕(むし歯)、歯質の欠損、歯根吸収、骨癒着、歯髄炎、歯髄壊死
  • 歯周組織:歯肉炎、歯周炎、歯槽骨骨吸収、フェネストレーション、歯肉退縮、知覚過敏
  • 軟組織:外傷、やけど(化学的・機械的)、アレルギー(特にニッケルとラテックス)
  • 歯科矯正用アンカースクリュー:破損、脱離、誤飲、歯根損傷
  • その他:(歯などの)痛み、装置の破損・脱離・誤飲、顎関節症、細胞毒性、感染、放射線被曝、治療期間の長期化、治療目標が完全に達成できない、後戻り、非症候群性原発性萌出不全(Primary Failure of Eruption)

交叉咬合の治療のよくある質問

交叉咬合の治療は、子供のうちにしたほうがいいのでしょうか?

臼歯部交叉咬合に対して、子供のうちに治療をしたほうが効果的なのか、という問題については、2021年に「Orthodontic treatment for posterior crossbites.」という論文が出されています。
この論文では、子供のうちにWタイプ拡大装置や床拡大装置を用いて歯列をひろげることで、臼歯部交叉咬合を改善することができる、と結論づけています。どちらかといえば、Wタイプ拡大装置を用いた方が効果的ではないか、とも書かれています。したがって、臼歯部交叉咬合に対しては、子供のうちに治療を行なっていいと考えられます。

参考文献

  1. Contemporary Orthodontics 6th Edition. William R. Proffit, Henry W. Fields, Brent Larson, David M. Sarver. Elsevier.
  2. Ugolini A, Agostino P, Silvestrini-Biavati A, Harrison JE, Batista KB. Orthodontic treatment for posterior crossbites. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Dec 24;12(12):CD000979.
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