犬歯が飛び出している「八重歯」

犬歯低位唇側転位とは

「犬歯低位唇側転位(けんしていいしんそくてんい)」とは、犬歯(前から3番目の歯)が外に飛び出した歯ならびのことです。実際には叢生の一種になります。

犬歯低位唇側転位の原因

犬歯低位唇側転位の原因は、顎の大きさと歯の大きさの不調和であり、先天性のものになります。

犬歯低位唇側転位の予防方法

ありません。

犬歯低位唇側転位のデメリット

「見た目が悪い」という審美的な問題や、「歯磨きがしにくく口の中を清潔に保ちにくい」という口の健康の問題、などが挙げられます。

犬歯低位唇側転位の治療方法

子供の場合

基本的な治療は、叢生の治療と同じです。子供の場合は体の成長が利用できるので、犬歯が外に飛び出した歯ならびをなおすためには、成長を利用して歯列を前後方向や水平方向にひろげ、歯のはえるすき間をつくっていきます。

  • 使用する装置・治療方法:ヘッドギア、リップバンパー、床拡大装置、など

また、明らかに犬歯が外に飛び出してはえそうな場合は、犬歯がはえてくる直前に隣の歯を抜いて、自然に犬歯が並ぶようにすき間をつくる方法もあります。この方法では永久歯を抜いてしまうので、慎重に行う必要があります。

  • 使用する装置・治療方法:連続抜去法

犬歯の飛び出しが軽度であれば、歯列をひろげながら、歯ならびも同時に整える治療を行います。

  • 使用する装置・治療方法:マウスピース型矯正装置、など

大人の場合

大人の場合も、叢生の治療と同じように、歯を抜いたり歯列をひろげたりして犬歯を並べるすき間をつくっていきます。

歯を抜いて犬歯を並べる場合、一般的には犬歯の後ろに生えている第一小臼歯(前から4番目の歯)を抜いてすき間をつくり、犬歯を並べていきます。本来であれば、外に飛び出した犬歯を抜いた方が治療は簡単なのですが、犬歯は他の歯よりも丈夫で長持ちする歯であり、笑った時の口元の印象にも影響をおよぼすため、治療が難しくなってもなるべく抜かずに並べるようにします。

犬歯の飛び出しが軽度であれば、歯を抜かずに歯列をひろげて犬歯を並べるすき間をつくっていきます。ただし、犬歯はもともと歯列の外側にはえてくるので、歯を支えている骨が非常に薄いことがあります。無理に歯列をひろげてしまうと犬歯の歯根が骨の外に飛び出してしまう危険性があるので、あらかじめ骨の厚さが十分にあることを確認してから治療を行う必要があります。

  • 使用する装置・治療方法:表からの白い装置(マルチブラケット装置)、マウスピース型矯正装置、など

犬歯低位唇側転位の治療費の目安(税込)

子供の場合

386,100〜503,800円

大人の場合

765,600〜875,600円

犬歯低位唇側転位の治療期間と通院回数の目安

子供の場合

  • 治療期間:1〜2年
  • 通院回数:12〜24回

大人の場合

  • 治療期間:2〜3年
  • 通院回数:24〜36回

犬歯低位唇側転位の治療の流れ

子供の場合

  1. 相談
  2. 検査・診断
  3. 一期治療開始
  4. 一期治療終了
    (以下は、子供の治療から大人の治療へ移行する場合)
  5. 永久歯萌出完了または成長終了まで経過観察
  6. 再検査・再診断
  7. 二期治療開始
  8. 二期治療終了・保定開始

大人の場合

  1. 相談
  2. 検査・診断
  3. 二期治療開始
  4. 二期治療終了・保定開始

犬歯低位唇側転位の治療のリスク

  • 歯:齲蝕(むし歯)、歯質の欠損、歯根吸収、骨癒着、歯髄炎、歯髄壊死
  • 歯周組織:歯肉炎、歯周炎、歯槽骨骨吸収、フェネストレーション、歯肉退縮、知覚過敏
  • 軟組織:外傷、やけど(化学的・機械的)、アレルギー(特にニッケルとラテックス)
  • 歯科矯正用アンカースクリュー:破損、脱離、誤飲、歯根損傷
  • その他:(歯などの)痛み、装置の破損・脱離・誤飲、顎関節症、細胞毒性、感染、放射線被曝、治療期間の長期化、治療目標が完全に達成できない、後戻り、非症候群性原発性萌出不全(Primary Failure of Eruption)

犬歯低位唇側転位の治療のよくある質問

犬歯低位唇側転位の治療は、子供のうちにしたほうがいいのでしょうか?

犬歯のはえる位置がずれているときに、子供のうちに乳歯を抜いてすき間をつくれば自然に良くなるのか、という問題については、2021年に「Interventions for promoting the eruption of palatally displaced permanent canine teeth, without the need for surgical exposure, in children aged 9 to 14 years.」という論文が出されています。
この論文は、厳密には犬歯低位唇側転位を対象としたものではないのですが、子供のうちに乳歯を抜いてすき間をつくるだけで犬歯の位置が自然に良くなるとはいえない、と結論づけています。このことから、子供の治療だからといって安易に乳歯を抜いてすき間をつくるだけの治療は、犬歯低位唇側転位の治療としてもあまり意味がないと考えられます。治療を行うのであれば、犬歯を並べるために必要なすき間を計算して歯列をひろげるような、本格的な治療を行う必要があります。

参考文献

  1. Contemporary Orthodontics 6th Edition. William R. Proffit, Henry W. Fields, Brent Larson, David M. Sarver. Elsevier.
  2. Benson PE, Atwal A, Bazargani F, Parkin N, Thind B. Interventions for promoting the eruption of palatally displaced permanent canine teeth, without the need for surgical exposure, in children aged 9 to 14 years. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Dec 30;12(12):CD012851.
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