歯の並びがデコボコしている「乱杭歯・叢生」

叢生とは

「叢生(そうせい)」とは、奥歯や前歯の前後的な位置に問題はないが、歯がデコボコに並んでいるかみ合わせのことです。専門的には、Angle I級不正咬合に分類されます。罹患率は約60%です。

叢生の原因

叢生の原因は、顎の大きさと歯の大きさの不調和であり、先天性のものになります。顎が大きくても歯がそれ以上に大きい場合は叢生になります。反対に、顎が小さくても歯がそれ以上に小さい場合は叢生になりません。

叢生の予防方法

ありません。

叢生のデメリット

「見た目が悪い」という審美的な問題や、「歯磨きがしにくく口の中を清潔に保ちにくい」という口の健康の問題、などが挙げられます。

叢生の治療方法

子供の場合

子供の場合は体の成長が利用できるので、デコボコしている歯ならびをなおすためには、成長を利用して歯列をひろげ、歯のはえるすき間をつくっていきます。この時に気をつけなければならないことは、ひろげる方向が前後方向と水平方向の二種類あることです。治療前に、どちらの方向へひろげるべきかを調べてから、治療を行うことが大切になります。

  • 使用する装置・治療方法:ヘッドギア、リップバンパー、床拡大装置、など

また、むし歯などが原因で乳歯が早期に抜けてしまうと、隣の歯が動いて永久歯がはえるすき間が小さくなってしまいます。この場合は、永久歯がはえるすき間がなくならないように、装置を使ってすき間を維持します。

  • 使用する装置・治療方法:舌側弧線装置(リンガルアーチ)、など

歯ならびのデコボコが軽度であれば、歯列をひろげながら、歯ならびも同時に整える治療を行います。

  • 使用する装置・治療方法:マウスピース型矯正装置、など

大人の場合

大人の場合は、子供と違って体の成長が期待できないので、別の方法で歯を並べるすき間をつくっていきます。

ひとつの方法としては、歯を抜いて歯を並べるすき間をつくっていきます。もっとも一般的に行われる方法で、治療方法も確立されているため、確実になおすことができます。この方法の欠点は、健全な歯を抜かなければならないことや、マウスピース型矯正装置で治療を行う場合は、治療が難しくなってしまうことなどが挙げられます。

もうひとつの方法としては、歯を抜かずに歯列をひろげて歯を並べるすき間をつくっていきます。ただし、成長が期待できない大人の場合は、歯列をひろげるために手術を用いたり、歯科矯正用アンカースクリューを用いたりする必要があります。また、歯列をひろげるかわりに、少しずつ歯を削ってすき間をつくる方法もあります。

  • 使用する装置・治療方法:表からの白い装置(マルチブラケット装置)、マウスピース型矯正装置、など

叢生の治療費の目安(税込)

子供の場合

437,800〜532,400円

大人の場合

831,600〜910,800円

叢生の治療期間と通院回数の目安

子供の場合

  • 治療期間:1〜2年
  • 通院回数:12〜24回

大人の場合

  • 治療期間:2〜3年
  • 通院回数:24〜36回

叢生の治療の流れ

子供の場合

  1. 相談
  2. 検査・診断
  3. 一期治療開始
  4. 一期治療終了
    (以下は、子供の治療から大人の治療へ移行する場合)
  5. 永久歯萌出完了または成長終了まで経過観察
  6. 再検査・再診断
  7. 二期治療開始
  8. 二期治療終了・保定開始

大人の場合

  1. 相談
  2. 検査・診断
  3. 二期治療開始
  4. 二期治療終了・保定開始

叢生の治療例

上下の前歯がガタガタ(20歳 女性)
事例 14

上下の前歯がガタガタ(20歳 女性)

前歯が重なっている(19歳 男性)
事例 13

前歯が重なっている(19歳 男性)

⻭並びが気になる、左上の⻭が内側に⼊っている(28歳 男性)
事例 11

⻭並びが気になる、左上の⻭が内側に⼊っている(28歳 男性)

前歯のガタガタが気になる(27歳 女性)
事例 10

前歯のガタガタが気になる(27歳 女性)

口元が出ている、下の歯がガタガタ(36歳 女性)
事例 8

口元が出ている、下の歯がガタガタ(36歳 女性)

叢生の治療のリスク

  • 歯:齲蝕(むし歯)、歯質の欠損、歯根吸収、骨癒着、歯髄炎、歯髄壊死
  • 歯周組織:歯肉炎、歯周炎、歯槽骨骨吸収、フェネストレーション、歯肉退縮、知覚過敏
  • 軟組織:外傷、やけど(化学的・機械的)、アレルギー(特にニッケルとラテックス)
  • 歯科矯正用アンカースクリュー:破損、脱離、誤飲、歯根損傷
  • その他:(歯などの)痛み、装置の破損・脱離・誤飲、顎関節症、細胞毒性、感染、放射線被曝、治療期間の長期化、治療目標が完全に達成できない、後戻り、非症候群性原発性萌出不全(Primary Failure of Eruption)

叢生の治療のよくある質問

叢生の治療は、子供のうちにしたほうがいいのでしょうか?

デコボコしている歯ならびに対して、子供のうちに治療をしたほうが効果的なのか、という問題については、2021年に「Orthodontic treatment for crowded teeth in children.」という論文が出されています。
この論文では、過去に行われたさまざまな研究を調べた結果、子供のうちに歯列をひろげることで、デコボコしている歯ならびを改善することができる、と結論づけています。ただし、まだ信頼できる研究の数が少ないので、将来的にこの結論は変わるかもしれない、とも述べられています。今のところは、子供のうちに治療を行なうことで、デコボコしている歯ならびを改善することができると考えていいと思います。

参考文献

  1. Contemporary Orthodontics 6th Edition. William R. Proffit, Henry W. Fields, Brent Larson, David M. Sarver. Elsevier.
  2. Turner S, Harrison JE, Sharif FN, Owens D, Millett DT. Orthodontic treatment for crowded teeth in children. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Dec 31;12(12):CD003453.
歯の並びがデコボコしている「乱杭歯・叢生」

歯の並びがデコボコしている「乱杭歯・叢生」

叢生とは 「叢生(そうせい)」とは、奥歯や前歯の前後的な位置に問題はないが、歯がデコボコに並んでいるかみ合わせのことです。専門的には、Angle I級不正咬合に分類されます。罹患率は約60%です。 叢生の原因 叢生の原因…

犬歯が飛び出している「八重歯」

犬歯が飛び出している「八重歯」

犬歯低位唇側転位とは 「犬歯低位唇側転位(けんしていいしんそくてんい)」とは、犬歯(前から3番目の歯)が外に飛び出した歯ならびのことです。実際には叢生の一種になります。 犬歯低位唇側転位の原因 犬歯低位唇側転位の原因は、…

歯と歯の間に隙間がある「すきっ歯・空隙歯列」

歯と歯の間に隙間がある「すきっ歯・空隙歯列」

空隙歯列とは 「空隙歯列(くうげきしれつ)」とは、奥歯や前歯の前後的な位置に問題はないが、歯と歯の間にすき間があるかみ合わせのことです。専門的には、Angle I級不正咬合に分類されます。 空隙歯列の原因 空隙歯列の原因…

前歯が出ている「出っ歯・上顎前突・上下顎前突」

前歯が出ている「出っ歯・上顎前突・上下顎前突」

上顎前突・上下顎前突とは 「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」とは、上の前歯や奥歯が前に出ているかみ合わせのことです。専門的には、Angle II級不正咬合に分類されます。罹患率は約20%です。 同じようなかみ合わせに、「…

受け口で悩んでいる「受け口・下顎前突」

受け口で悩んでいる「受け口・下顎前突」

下顎前突とは 「下顎前突(かがくぜんとつ)」とは、下の前歯や奥歯が前に出ているかみ合わせのことです。専門的には、Angle III級不正咬合に分類されます。罹患率は約5%です。 下顎前突の原因 下顎前突には、上の前歯が内…

上下の歯が閉じない「開咬」

上下の歯が閉じない「開咬」

開咬とは 「開咬(かいこう)」とは、上の歯と下の歯があたっていないかみ合わせのことです。オープンバイトとも呼ばれます。罹患率は約4%です。開咬といえば一般的には前歯があたっていない「前歯部開咬」を示すことが多いですが、奥…

噛み合わせが深い「過蓋咬合」

噛み合わせが深い「過蓋咬合」

過蓋咬合とは 「過蓋咬合(かがいこうごう)」とは、上の歯が下の歯を深く覆っているかみ合わせのことです。 過蓋咬合の原因 過蓋咬合の原因は、ものをかむときに使う筋肉(咀嚼筋)や唇の筋肉(口輪筋)の力が強く、その結果、上顎と…

噛み合わせが悪い/ずれている「交叉咬合」

噛み合わせが悪い/ずれている「交叉咬合」

交叉咬合とは 「交叉咬合(こうさこうごう)」とは、奥歯や前歯がずれてかんでいるかみ合わせのことです。前後的にずれている交叉咬合は反対咬合と同じものを示すことが多いため、ここでは水平的(左右)にずれている交叉咬合について説…

相談を受け付けております。
歯並びにお悩みがある方はお気軽にお問い合わせください。

カウンセリングを予約する